『暮らしの質を測る』


もともとGDPはただ経済の数値を示すものであったのに、社会の福利厚生度を示すものになっていってしまった。

 

 

 

 

 

フランスのサルコジ元大統領に召集されたジョセフ・スティグリッツさんやアマルティア・センさんなどの超ビッグネームが集結し、新しい福利厚生指標を提案するために侃々諤々議論した後の提案書の内容が本書には書かれています。

 

 

暮らしの質の測り方

次の3つを軸として計測することが提案された。

  1. 国民所得統計
  2. 幸福度の計測
  3. 持続可能性

 

まず、1.国民所得統計について。ひとえにGDPと言っても測り方によって、算出されるGDP費が全く違います。極論を言えば、家事などのシャドーワークをGDP算出にいれれば、劇的にGDP額は上がります。

測り方もきちんとしたものを整備しなくてはなりません。

そもそも「GDPがあがったー!」と言っているのに、むしろ貧しくなっているように感じることがあるのは、格差が開いていることもあるでしょうし、また、GDPという数値がそんなに信用なるものでないからです。

本来、資本消耗を含めて計算する純国民生産NNP(Net National Product)や家系の実質所得に焦点を当てる実質家計所得RHI(Real Household Income)という物の方が妥当な値らしいです。にも関わらずGDPばかりを僕らは使用しているという謎。

 

また、「平均」と「中位」は全く違います。格差が開いた世界においては、僕らの実感に近いのは平均というよりも中位値になります。

http://www.pref.yamaguchi.lg.jp/cmsdata/f/4/1/f41c32c22b54bc7ff7267236077fb2ff.pdf

 

ここをちゃんと測りましょう、というのがまず1。

 

次に2.幸福度の計測ですが、これが結構難しい。まず、そもそも「幸福とは何か?」という大きな壁がそびえ立ちます。

ここでは、主観的な幸福と客観的な幸福のどちらもが共に重要だとしています。客観的な幸福をもっと具体的に言えば、

  1. 物質的な生活水準
  2. 健康
  3. 教育
  4. 仕事を含む個人の活動
  5. 政治への発言と統治
  6. 社会的つながり
  7. 環境
  8. 経済的および物理的な安全度

の8つが人々の幸福度を形作るとしています。

 

幸福度の計測にはアマルティア・センさん中心に進められました。

①心理学で使われる主観的幸福
②Capability(暮らしの中の多種多様な諸機能および諸機能の中から何を選ぶかという本人の自由度)
③公正な割り当て

に基づいて幸福を計算しましょうか、ということになります。

 

①はまあ分かりやすいと思いますが、ぶっちゃけ②Capability③公正な割り当てはハンパない量の思想が裏にあります。

 

やはり幸福を定義するためには、その時代における社会思想を強く反映せざるを得ません(良い悪いではなく)。Capabilityは「社会正義の実現」という哲学的概念が根底にあり、そしたら「社会正義」とは何ぞや、という話になります。正義とは何かについてはまた別に記事を書きます。(たぶん)

「公正」も同じです。「公正であること」と「平等であること」は似ているようで、思想も違えば、政策も違ってきます。公正についてもそのうち記事を書きます。(たぶん)

 

ちなみに僕は、本書を読んでいて結局主観的幸福が一番まともなのではないかな、という感想を持ちました。客観的な幸福はイデオロギーの押し付けという側面から逃れられないからです。グローバリズムと自由市場主義のイデオロギーの押し付けで厄災をもたらした側面があるので、イデオロギー押し付けたくないな~という気持ちがあります。

 

 

そして最後に3.持続可能性ですが、これまでGDPベースで経済成長を推し進めてきた結果、「あれ?地球死にかけじゃね?」とふと気づきました。GDPに「環境配慮」という指標はないため、あまり考えずに来てしまいました。

 

僕が意外だったのは、国際的に有名な学者さんたちは、この3.持続可能(中心は環境面の配慮)にとても注力しているように見えたことでした。僕が思っているよりも環境への損害は甚大で、このままのペースで環境を破壊していくと本当に地球が終わってしまうという危機感がこの本から伝わってきました。

この環境についても「何らかの残高stocks」の値が分かるような”指標”を早急に作る必要があると警鐘を鳴らしています。

 

 

本を読んで

今までにある「暮らしの質」を測るための諸要素をまとめて、世界へ経済水準でなく暮らしの質を測る必要があるんだよー、と提言したこれら委員会とサルコジ元仏大統領は偉人だと思います。

思いますが、この本の中では具体的な指標の決定方法が示されておらず、抽象的な諸要素をまとめて示唆を与える程度のものでした。

それほどまでに、1.経済水準 2.幸福度 3.持続可能性を全て含んだ統括的な指標を作成することは難しいというただそれだけの事実なのでしょうが、いち早くそれを実現する必要があると思います。

 

その中でもやはり 1.経済水準に関しては、かなり正確な指標が作れるのではないか、と感じました。なぜなら2.3.よりも圧倒的に”データ”が豊富だからです。「たぶんこんな感じになるだろう」といった記述が本書の中で多かったですが、それは圧倒的に「幸福」や「環境」に関する超大規模なデータが累積しておらず、データがない状態で客観的に諸問題の関連を解析することなんて不可能なのです。

その点において、「経済発展」を追求してきた結果導かれた情報社会とIoTの発展によって様々なデータが取られていくことで「暮らしの質発展」を追求できるようになるという、そういった進化の過程をたどるような気がします。

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