具体的に今のブロックチェーンの問題と迫りくる未来像について、説得力を持って説明して下さっています。
DAOの課題
最近よく聞くようになってきましたが、DAOというのは
Distributed Autonomous Organization(分散化された自立組織)
です。
BitcoinとかEthereumでのブロックチェーンはDAOですね。今流行りのTeal組織とかもDAOな気がします。
最近言われている自律分散型の組織は、中央管理者がいない元来のインターネットの理念を体現しているので、その良い面(もしくは新しい面)が取り上げられることが多いですが、この本では現状のDAOの課題をいくつか提示してくれています。
その中でも面白かったのが、「ワンネスの罠」です。
インターネットの技術が改善されていく流れは以下の通りです。
- アイデアを思いつく
- トライアル
- 標準として提案
- 議論
- よい技術が選ばれ浸透していく
このステップ。
ところが、ブロックチェーンでは、一部の参加者が新しい仕様を試すとブロックが正しく作られているかの解釈がマイナー間で異なってしまいます。
ということはブロックチェーンは仕様の変更が利かない。
となるとステップは
- アイデアを思いつく
- 標準として提案
- 議論
- 議論
- 議論
- 議論
- 議論
- 決裂
- 双方が実装して実際に試す
- よい技術が選ばれ浸透していく
この結果、ハードフォークと呼ばれるEthereumがEthereumとEthereum classicに分かれる事態が生じました。
やっぱそう簡単に分散型のシステムはできないんですね。Teal組織もそんなの理想論じゃねえか!!!と叩かれていますね(笑)
しかし、著者の斉藤さんは、こういった課題をちゃんと見つけ、分析することが大事で、むしろ歴史を見る限り課題が見つかった後は、それを解決するスピードも想像以上に速いと言ってはります。
「ワンネスの罠」などを解決し、磨かれながらブロックチェーン技術が成熟してきそう。
三つ巴の変化
物的な貨幣は「価値の交換」を担うものなので、専門分化(分業化)している社会でなければ、使う意味がないとも言えます。
例えば、自給自足を快適にできる人は貨幣は必要ありませんし(当然)、狩猟採集民族もあまり貨幣を使う必要性は薄いです。
専門分化は個人の万能性を解体し、安全保障のために国家が必要となります。国家は税金を必要とするので、そのために貨幣が発明されたとさえ言えます。
このように「専門分化」「国家」「貨幣」は三つ巴で発展してきました。
そしてこれからも三つ巴で発展していかなければならないと指摘されます。
そしてその中で忘れてはいけないのが「贈与」であり、個人の万能性は、本来はコミュニティの中で助け合い(贈与)があって初めて成り立つものです。
贈与
人間は、サルや熊などの他の動物のように自分の気分に任せて食べ物を食べたりしない。例えば、机の上にプリンが置いてあっても、友達のプリンだったら食べない。スーパーに行ってハイチューを見つけても食べない。店の物だからです。どうしても欲しかったら買ってから食べるわけですね。
こんなことをするのはむしろ人間くらいです。
なんで食べたいときに食べ、目の前に食べ物があってもお金がなければ食べられないみたいな我慢をしているのでしょう。
ある小説の中ではその状態が、「食べ物に鍵をかける」と表現されました。
上記のSpeaker Deck内のピラミッドにおいて、私たちはピラミッドを登っていくように、社会を発展させてきたととらえることができます。
その結果として、構造的な不況や精神病の人が少なくない社会になり、それを疑問視する人が増えてきました。
もしかしたら、その解決策はピラミッドをまた下ることなのかもしれません。
そこで、「狩猟採集民族に戻るのかよ!そんなの無理に決まってんじゃねえか」と思うのが普通です。
しかし、お金を一切使わない、贈与だけの生活を僕らは皆経験しています。
それは、赤ん坊の時代です。
赤ん坊はお金を使って交換したりしない、ただ純粋に贈与のみによる存在。
人は与えることしか知らない状態から始まるのである
余談
他にも、ICOとNEOの違いの話などもめちゃめちゃ刺激的でしたが、今回は割愛します。興味あれば読んでみてください(^ ^)